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[笑道] 第二章(2)-そこは似て異なる別世界-

連載小説
「笑 道-わらいのみち-

役者志望の少年が、何の因果かお笑い芸人の世界へ。
タレント養成所を舞台に、『笑い』をテーマにした物語。
笑いの要素は一切ありません。ヘンなキャラ芸人ばっかりです。
でも、「笑い」って何なのかを伝えられる作品にしたいです。

携帯サイト…ぶんろぐPK…にて
先行連載中の作品を、加筆修正してアップ。

本作品の解説・登場人物紹介はコチラ
『笑道-わらいのみち-』解説・登場人物紹介

「笑道-わらいのみち-」
第二章「別世界」(2)-そこは似て異なる別世界-


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 青柳さんに連れられて、僕はWAクラスの入所式が行われている部屋の前までやってきた。
 僕に届いた合格証書や関連書類には、確かに『Aクラス』と表記がされていた。聞けば、どうやら事務局の手違いがあったようだ。合格証書などは改めて訂正したものを送ってくれるそうだが、今の僕にとってそんな事はもうどうでもいい。

「あ、坂野先生。彼が先ほどお話した奥村君です」

 青柳さんが部屋のドアを開けると、中にいた初老の男性に話しかけた。その人を見て僕はようやく思い出すのだった。そうだ、オーディションを受けた時に演技を審査してくれたあの先生だ。

「……早く入りなさい」

「あ、はい」

 坂野先生に促され、僕は足早に部屋に入ると一番手前の空いていた席に着いた。
 僕は横目でチラリと坂野先生に視線を送る。バラエティ部門というクラスに似つかわしくない無愛想な坂野先生。僕はこの雰囲気の前で完全に萎縮してしまうのだった。

「じゃあ奥村君、こっちで頑張って。……では、先生。あとよろしくお願いします」

 そういって青柳さんはドアを閉めた。すると坂野先生は青柳さんを一瞥することも無く、静かに、しかし氷のように冷たい口調で皆の前で言い切った。

「余計な横槍が入りましたが、改めてあなた方に言っておく。辞めるなら今のうちです」

 僕は自分の耳を疑った。一体この先生は何を言っているのだ。入所式当日に聞くような言葉ではない。だが、クラスの生徒たちは坂野先生の話をただ黙って聞いている。

「お笑いブームだか何だか知らないが、僕はそんなものを認めていません。そもそもお笑いなど『フェイス・アクト』に必要ないのです」

 無茶苦茶な話だ。だったら一体何のためにこのバラエティ部門のWAクラスは存在するのか。その僕の疑問をまるで見抜いたかのように坂野先生は続けた。

「何度も言いますが、『お笑いなら楽に芸能人になれそうだ』そう思って来た人はさっさと帰りなさい。何故ならこのクラスは俳優、女優クラスにすら選ばれなかった、言わば補欠クラスみたいなものですからね」

 補欠クラス。叩きつけられた現実に、先ほどまで湧き出ていた僕のやる気は、風前の灯と化していたのだった。
 坂野先生の厳しい発言に、静まり返っていた部屋。今日から船出だというのに、まるで葬式のように重苦しい空気に包まれていた。

「さぁ、帰るなら今ですよ」

 追い討ちをかけるように坂野先生の低い声が響いた。

「先生、いいですか」

 それは後方で座っていた二十代前半の男の人だった。
 坂野先生が「どうぞ」と言うと、その人は顔を強張らせて問い始めた。

「これから頑張っていこうって言うのに、ちょっと厳しすぎませんか。それに皆だって中途半端な気持ちでここに来てはいないと思います」

「そうですか。それなら結構。ただし、覚悟しておいてくださいね。僕を笑わせられない限り、あなた方にチャンスは無いと思っていて下さい」

 この坂野先生の言葉で、にわかに生徒たちがざわつき始めた。
 すると先ほどの男の人が再び尋ねたのだった。

「先生を笑わせたら、Aクラスへの転属もあるわけですね」

 坂野先生は名簿に目をやりながら彼に返答する。

「君は……佐伯君だね。もちろん、僕だって後継者を育てたいことに変わりは無い。公正に判断するから心配は要らない」

 その時だった。部屋のドアが無造作に開かれ、一人の男が部屋に入ってきた。

「こんちわーっ」

 その男は軽く坂野先生に会釈すると、僕の隣の椅子に大きく足を広げてどっかりと腰を据えた。

「あ……」

 僕は頭が真っ白になった。その男はオーディションの日にぶつかってきた、あの忌々しい関西弁の男だったからだ。

「あれ? マジで? お前みたいなんも受かったんか?」

 乱暴な言い方に僕はイライラしたが、ただただ作り笑顔を繰り返すばかりだった。

「まぁ、初日からクラスは間違える。遅刻はする。そんな人間の集まりですからね。せいぜい頑張ってください」

 坂野先生は呆れた顔で隣の関西男に目を送る。すると関西男は僕の左足を横から軽く蹴りながらブツブツとこぼしはじめた。

「なんやねんあのオッサン。あれ、演技指導のオッサンやん。あんな奴に笑いの何が分かるんや。迷惑な話やで。なぁお前、そう思わへんか?」

「はは……」

 関西男は坂野先生に聞こえてもいいとばかりの声で僕に愚痴をこぼす。しかも先ほどからしたたかに足を蹴られ続けている。こっちにとってはお前が迷惑な存在だ。

「来週からは発声、ダンス、日本舞踊、演技と、丸一日ハードなスケジュールになりますからそのつもりで。それらの授業が終わり次第、早速一回目の発表会を開きます」

 すると、隣の関西男が手を挙げた。

「センセー、発表会ってネタのですかぁ?」

「そうですね」

 僕は驚いた。レッスン初日からネタの発表会。今まで人を笑わせようなどと考えた事も無い僕が、何をどう発表しろというのか。
 すると、関西男が坂野先生に続けて問いかける。

「それって何やってもええんですかぁ?」

「犯罪以外は何でも結構」

「よっしゃ。面白そうやんけ」

 何を一人で息巻いているのか。関西男は腕組みするとやる気満々の顔を浮かべている。よほど笑わせられる自信があるようだ。だが、おかげでそれ以降は足を蹴られずに済むのだった。

「威勢の良い君は……浜谷君だね。楽しみにしているよ」

 その後、一通りの説明を終えると、坂野先生は「では来週」と、さっさと部屋から引き上げてしまった。それと同時に生徒たちも足取り重く部屋を後にする。
 それにしても感動も薄く、何とも味気の無い入所式。いや、毒気のあり過ぎる入所式だった。

 僕が帰宅しようと立ち上がると、左腕をグイッと引っ張られた。あの関西男だ。

「お前、来週ネタ書いて持って来いよ。ネタ次第ではコンビ組んでやってもええで」

 自分の居場所を求めていた僕は、どうやらかなり別世界に辿り着いてしまったようだ。




第二章「別世界」(2)-そこは似て異なる別世界- ここまで

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