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[笑道] 第一章(5)-オーディション(後編)-

連載小説
「笑 道-わらいのみち-


役者志望の少年が、何の因果かお笑い芸人の世界へ。
タレント養成所を舞台に、『笑い』をテーマにした物語。
笑いの要素は一切ありません。ヘンなキャラ芸人ばっかりです。
でも、「笑い」って何なのかを伝えられる作品にしたいです。

携帯サイト…ぶんろぐPK…にて
先行連載中の作品を、加筆修正してアップ。

本作品の解説・登場人物紹介はコチラ
『笑道-わらいのみち-』解説・登場人物紹介

「笑道-わらいのみち-」第一章「華やかなる世界へ」(5)-オーディション(後編)-

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 川島先生の課題は、『彼女を射止め、親友を捨てろ』と言うものだ。僕は頭の中でその状況を仮に自分の立場だったらと置き換えて整理する。

 もし、彼女に告白して返事がノーだった場合、その後の三人の間に漂う気まずい雰囲気をどうしろというのか。いや、むしろその逆で、彼女の返事が僕の望み通りになったとすれば、親友を裏切った罪悪感に打ちひしがれて生きる道が正しいと言い切れるだろうか。そして、「それも若さゆえのなせる業だ」などと一人感慨深くポツリと漏らすのだろうか。

 あらぬ妄想の迷い道に陥る中、ふと川島先生に目をやった。考え込む僕に何かを問いかけたいようだ。このままではいけない。早くこの設定の中の登場人物に乗り移らねばならない。
 だが、大きな問題がある。告白どころか僕自身、学校で女子と会話することなど殆どなかった。当然彼女などいないし、告白する仕草や、言葉の引き出しも持ち合わせていない。全てが未経験の中、漫画などで得た予備知識からその役を演じなければならない。つまりこれこそ正真正銘の役作りだ。

「難しい?」

 意を決したように川島先生が尋ねてきた。だが、ここで僕が「ハイ」と言ってこの課題から降参してしまえば、その時点で役者失格の烙印が押されるはずだ。僕は口元を引き締め、首を横に振る。

「いえ、大丈夫です」

 もちろん、そんなワケが無い。ノープランで出た言葉だ。
 先生は僕のその返事に笑顔で合図を送る。

「では、お願いします」

 すると、僕の全身にこの日三度目の寒気が走り、青白い光が交錯する中で自然と体が動き出したのだった。
 僕は机から少し後ろに下がると、場面転換よろしくクルッとその場で一回転し、そして俯きながら自ら創りあげた台詞を話し始める。

「急に呼び出してゴメン。……オレ、君がアイツを好きな事は知っている。……でも、やっぱり言わないと……どうしてもオレの気がすまないんだ」

 そして、目の前に居る川島先生の目を見つめ、僕は大声で言い切った。

「オレと結婚してください!」

 その瞬間、会場内が一気に静まり返ったのだった。
 僕の『告白』が轟いたその時、隣のテーブルに居た坂野先生がチラッとこちらを見た気がした。目視はしていないが、雰囲気でその目が全く笑っていないと感じ取れた。するとどうだ、周りのライバル達も此方を伺っている事が、背中越しに伝わってくるではないか。そして、それらの眼差しも、坂野先生と同じく「失笑」という言葉が相応しい視線だった。もちろん、目視はしていないが。
 僕は途端に「やってしまった」と心で呟いた。気付けばテンションはガタ落ち。そのクセ周りの反応はいたって冷静に受け止められた。おかげで目が泳いでいる事に自分でも気付いていたくらいだ。そして僕は改めて感じ取った。これは間違いなく大失敗だ……。

「はい、奥村さん結構ですよ……。ではこの採点表を受付に渡してから帰ってくださいね。お疲れ様でした」

 川島先生は少し笑みを浮かべながら僕に採点表を差し出した。僕は特に気にも留めずに「ハイ」と応えて受け取ると、一目散に部屋の出口へと向かっていた。

「まてよ……おかしいじゃないか」

 ふと、部屋を見渡した僕は、ズラリと勢ぞろいした先生方を今一度見渡す。僕が審査を受けた先生はわずか三人。しかし、どう考えても三人で審査が終了とは思えない先生の数だ。そして、この理由が何を意味するのか思いつくまでに、そう時間はかからなかった。

「つまり、『お前なんか審査するまでもない』って事か……」

 僕は力なく受付で採点表を渡すと、そのまま玄関先のロビーへ向かい肩を落とし歩いていく。冷たい廊下の中、背中越しに冷たい視線を感じながら……。

「やっぱ『結婚』は違うよな……せめて『付き合って』だよなぁ……」

 今更悔やんでも仕方が無いのに、後悔の数が冷たい視線と同じように僕の脳裏に突き刺さる。払っても、払っても、それは一向に止む気配が無い。
 やがてビルの玄関が見えてくる。僕の目の前に太陽の光射す現実の世界が口を広げて待っていたのだった。

第一章「華やかなる世界へ」(5)-オーディション(後編)-  ここまで



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