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[笑道] 第一章(1)-僕の居場所-

連載小説
「笑 道-わらいのみち-


役者志望の少年が、何の因果かお笑い芸人の世界へ。
タレント養成所を舞台に、『笑い』をテーマにした物語。
笑いの要素は一切ありません。ヘンなキャラ芸人ばっかりです。
でも、「笑い」って何なのかを伝えられる作品にしたいです。

携帯サイト……ぶんろぐポケスペ……にて
先行連載中の作品を、加筆修正してアップ。

本作品の解説・登場人物紹介はコチラ
『笑道-わらいのみち-』解説・登場人物紹介

「笑道-わらいのみち-」
第一章「華やかなる世界へ」(1)-僕の居場所-


本文は[READ MORE...] をクリック!
 中学二年の夏休み。また訪れる新学期を前にして、僕は自分の居場所を探していた。
 別に今の生活に不満があるわけではない。衣、食、住すべてにおいて何不自由なく流れる時間。にもかかわらず僕はさまよっていた。

 僕は一体何がしたいのだろう。何を求めているのだろう。僕の中で「結論」というプレッシャーが何度も何度も押し寄せていた。でも、それに気付きながら正面から受け止める事無く、今日もただ家の中でボーッと好きな音楽を聴いている。

「なるようになればいい」

 そんな風に自分を抑え込んでいた。部活に励む事などなく、勉強なんてなおさらやる気も出ない。先生の話もろくに耳に入れず教科書に無駄な絵を描いて貴重な時間をプチプチと潰していたくらいだ。成績の不安など少しも気にならなかった。友達と馬鹿な話で盛り上がって、この中学生活をのんびり過ごせばそれでいいのではないのかとそう思っていた。
 でも、やがては必ずやってくる高校受験、そして大学、就職。まだ先の話なのに、避けては通れない現実を、やり過ごす事が困難に思えてきた中学二年生の夏休み。

「何かが足りない」

 はたから見れば普通の男子中学生。小学校の頃は我先にとばかり教室で大声張り上げていたはずだった僕は、いつの間にか大人しい地味なタイプになっていた。ちょっとしたイジメを受けた事も一因かもしれない。そこから表向き目立つことに臆病になった。その積み重ねはやがて自分をさらけ出す術を失っていたのだ。自然と家の中でも家族との言葉数は気付かないうちに少なくなっていた。

「どこかで発散したい」

 だからといって誰かを傷つけるのではなく、人と共存できる自分にしか生み出せない居場所が欲しかった。その居場所で二つ目の自分を大いにさらけ出す事さえできたなら。この胸のくすぶりも少しは癒えるのかもしれない。本当は人一倍目立ちたがりである自分の性格を誰よりも一番知っていたからこそ。

「とにかく、この世で自分の名前を残したい」

 ぼやけた未来にまだ見えぬ目標が植えつけられた夏休みだった。

 ある日の朝。テーブルに置かれた新聞を開く。新聞を読むといってもテレビ欄とスポーツ欄を目で流すくらいだ。結果面白そうな番組や記事が無い朝は少しガッカリする。その日もそんな朝だった。
 ふとテレビ欄の横の広告に目が留まった。そこには「新人オーディション願書募集」という文字が大きく躍っていた。そしてこの夏の昼ドラで見覚えある新人の女優や子役の写真が数名並んでいる。どうやら芸能プロダクションのタレント養成スクールらしい。

「養成所かぁ……」

 その時、僕の中で大きな衝動が駆け巡ったのだった。そして気がつくとその広告に僕の目は釘付けになっていた。見ると所定の書類を提出し、二度の書類選考の末、合格者にはプロダクション主催の無料オーディションへの参加資格が与えられるという。

「お金かからないなら送ってみようかな」

 自分でも驚く行動力だった。僕は履歴書を買ってくると必要な事を書き込んでいく。するとほとんど白紙に近い履歴書が出来上がった。それもそうだ。学歴など小学校卒業と中学校入学くらいしか書くことがない。かといって幼稚園卒園など流石に気が引けて書く気にならない。おまけにそろばんなど習い事もやってこなかっただけに、世間的に認めてもらえそうな資格や特技なんて一つも持っていない。

「あ、そうか」

 何の取り柄もない奴でも、この世界は手を広げている。そう考えることで気が楽になった。僕は意気込みを示そうと志望動機の欄いっぱいに想いを書き込んだ。そこしかアピールできる場所が無く、でも、そこが何も無い自分を示すことのできる場所だったから。
 履歴書を書き終え、アルバムから適当な写真を選び終えるとそれらを白い封筒に入れた。あとは切手を貼って投函するだけだ。

「母さんくらいにはこの事を言っておこうかな……」

 一瞬そう思ったが、もし書類選考で落ちてしまったら顔から火が出るほど恥ずかしい話だ。僕は親には何も告げない事にして家を出るとその封筒を近くのポストに放り込んだ。ポストの蓋がパタンと閉じた時、どこからか変な達成感が僕の胸に沸いてきたのだった。


第一章「華やかなる世界へ」(1)-僕の居場所- ここまで



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