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[占い師シヴァの館] case.9 中堅漫才師 隣

たんぺん小説
「占い師シヴァの館」


――私は女占い師シヴァ。片田舎の駅前で、今日もひっそりと露店を開く。さぁ、いらっしゃい。悩み多きストレス社会の人間どもよ――

case.9 中堅漫才師 隣







 午後八時、その芸人はやってきた。人を笑わせる職業のクセに何ともつまらなそうな顔をしているねぇ。どれ、声をかけてみるかい。

「ちょっと。そこのアンタ」

 おやまぁ、呼びかけただけで一瞬『うわぁ一番やなタイプの奴に声掛けられちまった」的な顔をして。……フフフ、そんなことで芸人という仕事が務まるのかね。

「はい? なんですかぁ」

「……アンタ、『最近スベってますねん』って顔をしているねぇ」

「はぁ?」

「フン、アンタのことは良く知っているさ。芸歴十年を超える関西出身の中堅漫才師『曇りのちどしゃぶり』の隣サン」

「あぁ、どうも。……てか、『スベッてる』ってヒドイな……」

「なんだい? 今のツッコミは。中途半端だねぇ。いつものようにアグレッシブに腰を振りながらターン決めて『そうそうスキー場ではモテまくり……て、誰がスベッてるでんねん!』くらいのノリツッコミはできないのかい?」

「あのね……。僕ら芸人だっていつもスイッチ入ってるワケじゃないんですよ。おばさんだってスーパーで買い物してる最中にいきなり『占って』って誰かから言われても断るでしょ?」

「ハン。屁理屈は一人前のようだねぇ。しかも『ツッコミ所多すぎんまんねん』とか、『その下手糞な関西弁止めてくれまっかでんがな』程度のツッコミさえ言わない所を見ると、さっさとこの場を立ち去りたいって空気がプンプン漂ってくるね」

「はいはい、ワザと下手糞な関西弁使うのやめてくれますか」

「アタシの関西弁よりアンタのコミュニケーションの取り方の方が下手糞だよ」

「お、恐ろしく強引に人の心に踏み込む占い師やなぁ。……あのね、こんな事見ず知らずのおたくに言うのもなんですけどね、素人さんで一番困るのは『テレビと違ってつまんない』って意見なんですよ」

「へぇ! こいつは驚いたね。その言葉、可愛い女が大勢居る合コンで胸張って言えるのかい?」

「……」

「フン、正直じゃないか。まぁいいさ。それより、最近じゃアンタの相方がピンでやっている『東海道エロ講釈』がウケてるようだね。聞けばアンタかなりヒマしているんだって?」

「余計なお世話っすよ。そこまで知っているなら放っておいてもらえます? 僕だって別に占ってもらう気無いし。それに丁度今散歩中にネタが浮かびそうやったのに」

「おやそうかいそうかい、ネタねぇ……。それは相方との漫才のネタかい?」

「はぁ……。違います。おばさんの言う通り、相方ばっかり売れてるからね、僕もピンとして乗っかれるようにネタ考えてるんですよ」

「待ちな! アンタまだアニメのキャラクターのモノマネなんかで無理にネタ幅を広げるつもりかい!」

「……」

「ハン、まったく図星だって顔だね! このオタンコナス!」

「オ……」

「結局そんな置きに行くネタしか書けないからいつまでたっても大成しないのさ! アンタは漫才師なんだろ! どうしてもっと純粋に漫才を作ろうとしないんだい! まして散歩しているヒマがあるならネタなんてものアチコチ転がっているだろ! このバカタン!」

「バ……」

「いいかい、このまま芸人がやりたいなら客に媚びるようなネタはやめな! 少なくともアタシはそんな客に媚びたネタを見たいとは思わないね!」

「べ……別に媚びてるつもりなんてないすよ。……でも、気付けば相方ばかり目立ってしもて……。アイツばっかり仕事増えるし。最初は俺も自分のことのように嬉しかったっすよ。でも、暫くしてアイツのギャラを聞いて……。僕もなんとか自分をアピールしたくて必死なんすよ……」

「アピール? つくづく馬鹿だねぇ。その根性が客に媚びようとしている証拠じゃないか!」

「違いますよ! 俺が目立てばコンビとしてもっとステージも上に行けるし……」

「バカタン! オオバカタン! 天然記念物バカタン!」

「ひぃ!」

「ハッキリ言うよ! もしもアンタが目立てば本当にアンタ達コンビは解散さ!」

「え?」

「アンタが前に出れば出るほど二人とも怪我しておしまいなのさ! 今のアンタはね、『空気』にならないといけないんだよ!」

「……空気っすか。空気を読めと、お前はKYかと。そういうことっすか」

「は? やってくれたわね! ついにこの2010年にその単語を言ってしまったね、このドピラゲッチョ!」

「ドピ?」

「アタシはねKYって言葉使ってた奴のほうがよっぽど空気汚しまくっていたと思うね! とにかく、アタシの言う『空気』がわからないならアンタのやりたいようにやればいいさ! さぁ名刺渡しておくから、何か気づけばまた来ればいい。アンタ、それなりに頑張んな!」

 おやおや、まだまだ理解できていないようだね。フフフ、それでいいのさ。そうして悩みぬいて前が見えなくなった時が勝負さ。またいらっしゃい……。

――私は女占い師シヴァ。毎日ここで待っているわ。さぁ、いらっしゃい。……ただし、ブログ訪問者の空気なんて読む気はサラサラないからね――

case.9 中堅漫才師 隣 おわり

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